『まさに、うたごころ。』
彼女の声には意思が感じられるから好きだ。音楽の意思が混じりけのないエネルギーとなって飛んでくる。「KissMeGood-Bye」という1曲目から声が空気を震わし、想いが一直線のジェットストリームの如く、流れたように感じた。また“信じて飛べばいい”からサビへかけ強さが昇華されると、曲想は雲の向うに光が射すようで美しい。確かにアレンジも大きな展開で小川がやがて大河となり海へ注ぐパターンだが、しかし彼女のこえの背景にしか過ぎない。この声の力が一枚目の冒頭に飾られることで、自分はアンジェラ・アキの音楽に一気にのめりこんでしまった。

「お願い」の空蝉のような表現や「宇宙」の引力のタガがはずれる虚無感も大注目だし、「大袈裟に『愛してる』」「YourLoveSong」も名演。ピアノの質感も聴き所。

“ふるさと”というフレーズが耳に残る「HOME」はアンジェラ・アキを堪能する試金石だと思う。そのサビの瞬間、声とメロディラインで最高の優しさを肌に感じる。この主題を扱う上で飾らないこころが我々にもすーっと溶け込んできた。考えてみれば「ふるさと」という音の響きの美しさにも改めて気づく。発すれば、普段知っていたようで知らなかった余韻が還って来るようだ。ここから「YourLoveSong」に流れ込んでゆくラストはちょっとした感動といっていい。